夕焼け色の時

「日が昇り、沈むのにも、人が生き、死んでいくのにも、意味なんてない。ただの自然現象よ。決められた時間が来ればそうなる、仕組みでしかないわ。でも、その間にどれだけのものが育まれることか」

胸を開き、両手を広げ、夕暮れの空気を吸い込むと。

ああ、こんな風に大きく深呼吸をするのは、いつぶりのことだろう。

「太陽の光を受けて植物が育ち、それを食べて動物が生を繋ぎ……何十、何百億……いえ、もっとたくさんの数限りない命が育まれ、そして、消えていく。ここから見える町の人達もみんな同じ……そう考えれば、この景色もあなたも、私の目には、とても綺麗で愛しく思える……」

金色に輝く景色から目を移し、傍らのその子の頬に手を滑らせると、暗い穴のようだった目が驚きに揺れた。

「喜びと希望の光を放つ朝日と違って、夕日は、痛みや悲しみを孕んでいる。だからこそ、こんなにも切なく綺麗な色で世界を照らすの」



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