夕焼け色の時
私は、夕焼けに染まる空が好き。
もうすぐ終わりの時を迎える、その時に最も熟した光を放つ太陽は、人の人生に似ているから。
まだ、午前の空を昇っていく途中のあのその子が、まだ知らない光。
これから知るはずの、この愛しい気持ち。
「こんな所にいたのか」
背後からの声は、聞いたことのない、けれど、親しみを感じる声だった。
「随分と探したぜ。年寄りにこんな苦労させるたぁ、ひでえ仕打ちだな」
ため息をついて、近寄って来たのは、灰色とこげ茶の縞を持つ一匹の猫。
「最後の最後にすることが赤の他人へのお節介たぁ、あんたの世話焼きも筋金入りだぜ」
猫の一言で、失われていた私の記憶が、花開くように蘇った。
私は、この猫をよく知っている。