冷徹社長の秘密〜彼が社長を脱いだなら〜
「・・・こんなところに住んでいるのか？」



社長の車に乗せてもらい、向かったのは、私の家。最初、乗せてもらった時には、暗くて分からなかったけれど、私みたいな一般人でも分かる高級車。


外観を見て、本当に乗ってもいいのかと躊躇うくらいだったけれど、助手席には、私の大切な夢にまで見たバッグがちょこんと置いてある。それだけ取って帰るなんてこと私にはできるはずもない。


「家まで送ってやる」


まるで、シンデレラにでもなったかのような夢のような出来事。普通に生活をしていても決して乗れないような高級車に乗るなんて一時間前まで、考えもつかないことだった。


それだけじゃない。運転しながら、時折、様子を伺い、落ち着かない私の頭を優しく撫でてくれる社長。本当にドキドキが止まらない。


一瞬だけ、そこが自分の居場所なのかと勘違いをするくらい、酔いしれていた。自分の家に戻ってきて、社長の一言を聞くまでは。


家賃が月、五万円の二階建てアパートの二階が私の家。六畳一間でお風呂はなし。


洗濯機は共同だけれど、さすがにそれは使えず、週に一度、コインランドリーに行っている。お風呂は徒歩十分のところにある銭湯。これが私の日常。
< 11 / 152 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop