冷徹社長の秘密〜彼が社長を脱いだなら〜
その日の仕事はいつもよりお客様が少ないように感じた。平日だし、クリスマスなんかのイベントがあるわけでもない。


だからそんなにたくさんお客様が来ないのが普通なのに、雑誌でのあんな扱いを目の当たりにしてしまったからかもしれない。


「今日入ってきたから」と三宅さんに言われ、陳列された今期の新作バッグも保守的で悪く言えば、進化はない。どれもとても可愛いはずなのに。


いつもなら、新作が入ってきたら大はしゃぎするはずの私が何の反応も示さないからか、三宅さんやみゆちゃんたちも不思議そうに私を見ていた。



「どうしたの?次期店長。浮かない顔して。いつも新作が入ってきたら『可愛い』って大はしゃぎするのに」



三宅さんに声を掛けられ、とりあえず『可愛いですね』と返すもやっぱり様子がおかしいと言われてしまった。当然か。


次期店長を辞退することも三宅さんに伝えなくてはいけないこともあり、今日、三宅さんに仕事帰りに時間を作って欲しいとお願いした。
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