冷徹社長の秘密〜彼が社長を脱いだなら〜
諒はきっと、気になっているだろうし、心配してくれているかもしれない。私が逆の立場ならきっと何度も何度も電話を掛けていたと思う。


でも、こんな惨めな自分のまま、電話を掛けたくなかった。絶対に諒を責める言葉ばかりぶつけてしまう。


壁にぶちあたったのは、もしかしたら初めてなのかもしれない。


受験も就職も必ず一度は壁にぶち当たるものなのに、私は幸いなことに高校も大学も志望校に合格して、大好きなジョルフェムに就職も出来た。


だから、出来ないことはないとたかをくくっていた。何も思いつかないけれど、行き当たりばったりでなんとかなるだろうと。


やっと自分の甘さと未熟さを痛感した。


「ああっ、もう!わからない、わからない。私はただ、ジョルフェムが大好きなだけなんだよ!そんな私が何をすればいいんだよ!」


誰もいないことをいいことにベッドに横になり、むしゃくしゃした気持ちを大声で叫びながら気づけば私は眠っていた。


結局、一週間が過ぎてもほとんど、売り上げが伸びることはなかった。みゆちゃんも私も毎日、何をしに一時間も掛けてEMISIAに行ってるのかすらわからないほど。


諒からの電話も無視を続け、そんな自分が嫌になる。もうジョルフェムを好きなだけじゃ続けるのも辛い。
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