冷徹社長の秘密〜彼が社長を脱いだなら〜
そんな日々が続いた土曜日の朝、目が覚めたのは、携帯のアラームではなく、誰かに「深月」と呼び起こされたから。


こんな朝早く、家に入り、私を呼び起こすなんて、一人しかいない。まさか!と思い飛び起きると心配そうに私を見る諒がいた。


「・・・ど、どうして?どうして、諒が?」


「何度も何度も電話を掛けただろ?」


「ごめんなさい。ちょっと落ち込んでいて」


諒がいる。目の前に諒がいるのに感じるのは、嬉しいという幸せな気持ちよりも、申し訳ないという罪悪感やこんな惨めな自分を見られたくないという思い。


「こっちはまとまった。お前は随分と苦戦しているようだな」


「・・・すみません。この一週間、何一つ結果を残せてはいませんし、売り上げもありません。もう私には何をすればいいのかわからないです」


久しぶりに会えたというのに、諒も冷徹社長として接してくるからか、私は一番嫌な投げやりの態度を彼に取ってしまった。こんな私、嫌いになられても仕方ない。


「・・・そうか。仕方がない。それならジョルフェムはもう再起は無理だな」


「どうして?どうしてそんなことばかり言うんですか?私はただのショップ店員です!知恵も案も何も思いつかなくて周りはみんな敵ばかり。そんな中でどうしろっていうんですか?」


ボロボロと涙を流しながら、強く訴える私の姿は諒にも動揺を与えたみたいだった。


もう終わった。諒との恋も、大好きなジョルフェムで働くことも。
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