冷徹社長の秘密〜彼が社長を脱いだなら〜
「す、すみません。結局お世話になるはめになってしまって」


押し切られる形だったはずなのに、結局、お世話にならざるを得なくなってしまった。

というのも部屋に入った瞬間、部屋の中は、グシャグシャに荒らされていた。


幸い、うちの家には金目になるものはなかったけれど、下着やお気に入りだった洋服などは全てなくなっている。


目の前の惨状に叫び、腰を抜かすと、外で待ってくれていた社長が入ってきてくれて、何も出来ない私の代わりに、警察を呼んでくれて対応してくれた。


その間、ずっと震える私の肩を抱きながら。


「気にするな。それに俺も安心できる。ほら、転ぶと、大変だからな」


全ての処理を終えて、結局行き場もなく、またここに犯人が現れるかもしれないということもあり、結局、私は社長のお家でしばらくお世話になることになった。


まだ、頭がついていかないけれど、手を差し伸べられ、脳裏に過ぎったのは、やっぱりシンデレラ。


暗闇で見えないことを理由にその手を取って、一段、一段と階段を下りる。


綺麗なドレスを着ているわけでもない、煌びやかなお城の豪華な螺旋階段でもない。


でも、そんなことを忘れるくらい、いや、頭の中で自分がシンデレラになったように思えるくらい、私はこの瞬間、一生分の贅沢をしたように思えた。
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