冷徹社長の秘密〜彼が社長を脱いだなら〜
「・・・本当にすみません。でも、どうして、私の面倒を見てくださると言ってくださったのですか?」


「・・・俺は、お前のことを信頼していない。だから、何か問題を起こさないように監視するためだ。と言えば納得するか?」


そのまま、今度は自分から乗った社長の車。エンジンを掛ける前にどうしても聞きたかった質問を私は社長にぶつけた。


すると、返ってきたのはまさかの質問返し。確かにそう言われれば納得せざるを得ない。でも、それならもっと他にも方法がある。


「それなら、私に見張りをつけるなどできます。社長、自らが名乗り上げていただく理由もございません」


「そうか。じゃあ、答え合わせをしようか。とその前に、その堅苦しい話し方をやめないか?俺は今日からお前の前でだけ『社長』を脱ぐ」



社長は、そう言ってゴソゴソとグローブボックスの中から何かを取り出した。社長を脱ぐ?全く私は話についていけない。


それのに社長はそれを開けて、そっと自分に装着した。


「久しぶりに掛けたけどなかなかいいな。よし、知ってるか?肩書きを気にするのは、日本だけなんだ。欧米では肩書きよりも先に自分の名前を名乗るんだ」


「あ、あの・・・」


「これからしばらくは、一緒に住むことになるのに、堅苦しいのはお互い窮屈だしな。だから『社長』を脱いで『メガネ』を掛けたら肩書きは抜き。じゃ改めて。俺は一ノ瀬諒。歳は三十一。お前は?」


「わ、私は、桜木深月です。と、歳は二十三です」
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