冷徹社長の秘密〜彼が社長を脱いだなら〜
人間の欲求というのは、本当に恐ろしい。まさかこんな緊張感のある場所だというのに、さっきから私のお腹の虫が今にも鳴きそう。


確かに今日はバタバタしていて、お昼食べ損なって、休憩時間に先輩の旅行土産のおまんじゅうを一つつまんだだけ。


でも、さすがにこんな高級車の中であんな間抜けな音を出すなんて耐えられない。でもかと言って、お腹が空いたなんて口に出せるはずもない。


「どうした?難しい顔して」


「い、いえ。何でもありません」


「ああっ、そうか。確かここを曲がったところにコンビニがあったから寄るよ。我慢できるか?」


「は、はい」


思わず大声で返事をしてしまった。社長はクスクスと笑ってるけど、やっぱり社長っていうのは、人のことをちゃんと見ているんだ。


私が何も言わなくてもわかってくれるなんて、すごい。


私の空腹まで感じ取ってくれるなんて。
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