冷徹社長の秘密〜彼が社長を脱いだなら〜
目の前で、シェフがオムレツを焼いてくれている。慣れた手つきでささっと。それを社長は目をそらさずにジッと見ているけれど、私は不安だった。さすがにここで摂食障害のことは言えるはずがない。


「あの、大丈夫ですか?私、食べれますからオムレツ、二つ食べますよ」



あっという間に出来上がったオムレツ。ふわふわでこれぞプロという仕上がりに目を奪われた。

シェフからオムレツのお皿を受け取り、一度、お皿を置きに席に戻ったとき、こっそりと私は社長に言った。


「心配してくれてありがとう。でも、本当に大丈夫だ。みぃが大食いなのはわかったけれど、これは俺が食べるし、みぃの皿のやつも食ってやるつもりで多めに入れたんだ」


「大食いって。でも、本当に無理しないでくださいね」


「ああ。みぃといるときは無理しないって決めたから。だから気にするな」


どうして、そんな言葉が出て来るんだろう。まるで、ずっと前から私のことを知っているような口ぶり。誰と勘違いしているんだろう。


「大丈夫だ。俺は自分で自分のことは一番よくわかってる。だから無理はしない。ほら、焼きたてパンも取りに行くぞ」
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