冷徹社長の秘密〜彼が社長を脱いだなら〜
朝は酷かった。恥ずかしながらもバイキングを堪能したあと、二人で部屋に戻ると忘れていたペナルティーの催促。私からのキス。


当然、そんなことできるはずもないのに、「社長命令」と言われ、渋々私からした。もちろん唇ではなく、おでこに。


「まあ、許してやるか。でもその代わり、五回ペナルティが続くと強制的に唇にキスだからな」


ああっ、そんなことできるはずもない。なんとか気をつけなければ。一旦、頭はそっちに意識がいったものの店内に入るとそんなことも忘れるくらい可愛い服に目を奪われた。


「可愛い」



見渡す限り、可愛い服でどれから見ようか迷ってしまう。花柄モチーフのワンピースは先輩たちが着ていて羨ましかった。その中で一際、私の目を釘付けにしたのは、紺色のノースリーブワンピース。そこに白の花柄がプリントされている。


「すごくみぃに似合うと思うぞ、間違いなく」


「き、着てみてもいいですか?」


試着室に入り、値札を見る。一万円のワンピース。私からすれば高額だけれど、一枚あれば着回しが効くアイテム。それにやっぱり着てみても可愛い。欲しい。


「みぃ、どうだ?開けてもいいか?」


「はい」


ワンピースを着たまま、試着室のカーテンを開けると社長がジッと私を見た。でも、何も言わない。やっぱり田舎者にはワンピースなんて似合わないのかな。
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