冷徹社長の秘密〜彼が社長を脱いだなら〜
「・・・もっと可愛がってやりたかったな。頭を撫で回して、胸に抱きしめて、キスしてやりたかった。一緒に寝て、朝はおはようのキスをしてめちゃくちゃに愛してやりたかった」

「・・・そんなに、好きだったんですね」

「ああ、愛してたよ、みぃのこと」

ん?んん?みぃのこと?いやいや私じゃない。猫だ。社長が昔、飼っていた猫のこと。それなのにこれでもかと言わんばかりの顔から火が出そうな社長のセリフに自分が言われているような錯覚に陥る私は、恋愛初心者にもほどがある。

「あれ、みぃ。顔が赤いけれど大丈夫か?」

この人、ワザとだ。言葉と裏腹にとてつもなく、意地悪な表情を浮かべている。私をからかっているんだ。

「ズルイです。そんな風にからかうなんて。私、恋愛初心者なんです。そんなこと言われたら・・・」

「言われたら?」

私に顔を近づけて意地悪な笑みで言葉を待つ社長。本当にこんなこと慣れていない。彼氏がいたこともあるけれど、こんな風にストレートな言葉を言ってくれる人じゃなかったから。

「・・・照れちゃいます」

「バカ!思わず理性飛び掛けただろうが!」

ゴツンと力強く額をぶつけられた。痛いくらい。もう行くぞと車にエンジンを掛ける社長の耳は心なしか赤い?


よくわからないけれど、社長はその後話しかけてもなぜか不機嫌で、その理由がまったく思い当たらない私は、頭に疑問符を浮かべていた。

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