冷徹社長の秘密〜彼が社長を脱いだなら〜
「座ってろ」と促され、私はふかふかの高級感あふれる黒のソファの上にそっと腰を下ろした。

社長が言っていたように、部屋にはあまり物がない。生活感もあまり感じられないし家具もこのソファとテーブルくらい。


リビングだというのにテレビもない。音がまったくしない部屋。私は賑やかな家で育ったから一人暮らしをしていても、寂しさをまぎらわすためにテレビは必須だった。



「とりあえずミルクと砂糖は一つずつ入れたけど、足りないなら足してくれ」

「すみません。ありがとうございます」

「・・・落ち着かないか?」


コーヒーカップを二つ持った社長は一つを私に渡してくれるともう一つを手に持ったまま私の隣に座った。


そんなに大きくない二人掛けのソファは密着度がすごく、少しでも動けば社長の体に触れてしまう。


「すみません。いろいろとお世話になってしまって」



「いや、災難続きだったな。俺にケガをさせられるだけじゃなくて、家まで空き巣にやられるなんて」


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