冷徹社長の秘密〜彼が社長を脱いだなら〜
私みたいなショップ店員でも、社長を知っているのは、去年の夏の展示会で彼を見かけたから。
去年の夏、本社近くの会場で、ジョルフェムの新作展示会が行われた。私は、まだそのときには、契約社員として入ったばかりのど新人だったけれど、裏方のヘルプとして呼ばれ、お茶出しなどをしていた。
『桜木さん、あの方がうちの社長よ。一ノ瀬諒。なかなかお会いすることがないからあなた、一目見ることだけでも出来て、よかったわね』
私と一緒にお茶出しをしていた担当の人にそう言われて、視線の先を見るとたくさんの人に囲まれる一人の男性。それが一ノ瀬諒社長だった。
『かっこいいわよね』
『はい。でも、全然表情が変わらないですね。関係者の人が挨拶に来ているのに、ニコリとも笑わないし』
一瞬で目を引くような容姿だというのに、表情はロボットのように変わらない。ずっと冷静沈着な姿は私の中でかなり印象的だった。
『まぁ、影では冷徹社長と呼ばれてるからね。ほら、聞かれたことも淡々と答えてるし、噂ではいらない人間はすぐに切り捨てるらしいわよ。でもあれだけかっこいいと冷静沈着でクールなのがたまらないわ』
その人はそう言っていたけれど、ジョルフェムが好きで憧れて入った私からすれば、ジョルフェムを好きだと感じられない社長の姿はあまり好ましくは思えなかった。
去年の夏、本社近くの会場で、ジョルフェムの新作展示会が行われた。私は、まだそのときには、契約社員として入ったばかりのど新人だったけれど、裏方のヘルプとして呼ばれ、お茶出しなどをしていた。
『桜木さん、あの方がうちの社長よ。一ノ瀬諒。なかなかお会いすることがないからあなた、一目見ることだけでも出来て、よかったわね』
私と一緒にお茶出しをしていた担当の人にそう言われて、視線の先を見るとたくさんの人に囲まれる一人の男性。それが一ノ瀬諒社長だった。
『かっこいいわよね』
『はい。でも、全然表情が変わらないですね。関係者の人が挨拶に来ているのに、ニコリとも笑わないし』
一瞬で目を引くような容姿だというのに、表情はロボットのように変わらない。ずっと冷静沈着な姿は私の中でかなり印象的だった。
『まぁ、影では冷徹社長と呼ばれてるからね。ほら、聞かれたことも淡々と答えてるし、噂ではいらない人間はすぐに切り捨てるらしいわよ。でもあれだけかっこいいと冷静沈着でクールなのがたまらないわ』
その人はそう言っていたけれど、ジョルフェムが好きで憧れて入った私からすれば、ジョルフェムを好きだと感じられない社長の姿はあまり好ましくは思えなかった。