冷徹社長の秘密〜彼が社長を脱いだなら〜
ここに来る前、社長に前の家に寄ってもらった。一日経ったとはいえ、あの惨状を見たくはなかったけれど、必要なものがあるかもしれないということと社長に「今すぐ引き払え」と念を押されたから。


大家さんも事情が事情だからとすぐに了承してくれていらないものは置いておけば後は捨てておくとまで言ってくれ、私は必要なものだけを持ってアパートを引き払った。


結局それでここに来るのが遅くなってしまったこともあり、すっかり日は暮れてしまった。


「そういや晩飯も食ってなかったな。どうする?」

「社長、食べられますか?」

「食べる。お前と一緒なら飯が本当に旨く感じるんだ」

「だったらピザでも頼みましょうか?」

ここで手料理でもサッと作れればいいのだけれど、さすがに効き手が使えないからそれは無理。でもいつかもし機会があれば社長に何か私の手料理を食べてもらえるといいな。


なんてありえもしないことを思いながら、デリバリーピザを頼んだ。


「ピザなんて食うのいつぶりだろうな」

「あの・・・社長はいつからその摂食障害になられたんですか?原因とか」

あまり立ち入ったことを聞くのは失礼だろうけれど、摂食障害になるということはそれなりに何か大きな原因があるはず。


言いたくないなら言わないだろうけれど、気になって仕方がなかったから聞いてしまった。

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