冷徹社長の秘密〜彼が社長を脱いだなら〜
「・・・まあそれはまた話す。でもまああのアパートを出るきっかけができてよかった。あんなところにみぃを一人で住ませるなんてできないからな」


「お優しいんですね、社長は」


すっと話を流されたけれど、話してくれると言ってくれたことが嬉しかった。まだ知り合ったばかり。

それに社長は雲の上の存在で身近に感じるなんておこがましいくらいなのに、ドキドキが止まらない。



「誰にでもじゃない。お前にだけだよ」

「社長?」


そう言うと突然、真顔になり私の手からコーヒーカップを奪うとそれをテーブルの上に置いた社長は私の肩を掴み、向かいあわせにした。



「みぃ、俺は本当にお前に助けられたんだ。昨日、俺は自暴自棄になっていた。いつもならあんな乱暴な運転なんてしない。それくらい何もかもが嫌になっていた。でも、お前にこんなケガをさせてしまったことは本当にすまないと思っている」


「やめてください。私、本当に大丈夫です。むしろ車に轢かれそうになったのにこんな軽傷ですむなんてラッキーですよ」


笑顔を見せて、安心させようと思ったのに社長は今にも泣きそうな顔をして、私のことを強く抱きしめた。


その腕がとても震えているように思えて社長を包み込むように私も社長を強く抱きしめた。「大丈夫ですよ」と何度も何度も言いながら。


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