冷徹社長の秘密〜彼が社長を脱いだなら〜
協力すると言った手前、さすがにそれはとはもう言えない。結局、買ってもらった下着や服を手にお風呂場に向かい、先にお風呂に入らせてもらったけれど、やっぱり落ち着かない。


広い浴槽、綺麗で使用感がほとんど感じられない。いつもなら銭湯に入っていた私がこんな豪華なお風呂を独り占めしてもいいのかと萎縮してしまい、隅にそっと浸かるくらいしか出来なかった。


そして、言葉通り社長は私がお風呂を出た後、自分もお風呂に入り、私を寝室へと誘うと「おやすみ、みぃ」と頬にキスを落として私を抱きしめて眠った。

広い胸板、力強く私を抱きしめる腕。
聞こえてくる鼓動に、寝息。どれもが私の知らないとのばかり。こんなにドキドキする体験なんて初めてだった。


「絶対に眠れないと思ったのに、熟睡できちゃった」


緊張感とドキドキで眠れるはずもないと思っていたのに、意外にも社長の腕の中は心地よくて疲れていたこともあってかすぐに私も眠ってしまった。


「・・・おはよう」


「お、おはようございます。よ、よく眠れましたか?」


「ああ、久々に熟睡できた。みぃのおかげだ」


そう言ってまた私を強く抱きしめて、頬にキスを落とす社長。猫だ、私は猫の代わりだ。猫、猫、猫・・・ってやっぱり思えない。


私は猫じゃない。


「あ、あの社長って本当に猫が好きなんですね。なんか猫を溺愛してるなぁって思いました」


何を言ってるんだ、私は。猫を溺愛してるなあって感想おかしすぎる。社長は一瞬、キョトンとした顔をした後、なぜか意地悪そうに笑った。




「溺愛してるだろ?これから毎日、溺愛しまくるからそのつもりでお前も覚悟してろよ。それとまた社長って言ったからペナルティな」



眼鏡を掛けてないじゃないですか!と言う私の反論に、「みぃと二人っきりのときは掛けてなくても社長は脱いでる」と結局押しに負けてしまい、私から社長に頬にペナルティのキスをした。
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