冷徹社長の秘密〜彼が社長を脱いだなら〜
「やっと二人っきりになれたな」


病院の精算を済ませ、三宅さんとみゆちゃんを送って家に帰ってきたのは夜、七時を回っていた。

三宅さんがショップに連絡してくれたらしく、ショップのことは気にしなくていいからゆっくり帰って来てくださいと言われたと言っていた。


車中はずっと元気のなかったみゆちゃんを社長が「気にするな」と励ます不思議な光景。

さすがに私も三宅さんもみゆちゃんをかばうことは出来なくて、居心地が悪かった。

でも、三宅さんがちゃんと社長に噛み付いた理由を説明しなさいと言うとみゆちゃんはゆっくりと口を開いた。

「うちの店舗は恵まれていたけれど、他の店舗の同期から売上のノルマがあり、毎月大量のジョルフェムのバッグを買わされていると聞いていたこととそれが社長方針だと聞かされてると聞いていて、いてもたってもいられなくなりました」

「・・・そうか。誤解は解けたのか?」

「はい。三宅さんに説明されて、うちの店が恵まれているわけじゃなく、その方針がおかしいし、社長命令ではないと。本当にすみませんでした」

社長と初めて会ったとき、私はジョルフェムのバッグを買ったときだった。


あのとき、「買わされたのか?」と言ったのはこういうことだったのか。少しずつ謎が紐解かれていくことについていかなきゃいけない。


「中西、絶対にやめるな、社長命令だ!」


彼女の家の前で社長が言った言葉。みゆちゃんは泣きながらも大きく頷いてくれたからちょっとホッとした。
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