遠まわりの糸
そして、月曜日。


葵と土曜日にメガネ買いに行ってから、はじめての通学。


いつもと変わらない通学路なのに、つい葵がいないか探してしまう。


っていうか、俺は朝練で早いから、葵がいるわけないんだけど。



昨日の夜、ラーメン食べて帰ってから、悩みに悩んで葵のスマホにメッセージを送った。


『明日学校で、新しいメガネをかけた葵に会えるのを楽しみにしてる』


このメッセージを送るまで、1時間くらい書いては消してを繰り返した。


そもそも、用事でもないのにメッセージを送っていいもんなのか?


でも、なんでもない会話でも、つながっていたかったんだ。


風呂から出たら、葵から返事がきてた。


『私も、朔に会えるのを楽しみにしてる』


読んだ瞬間、よっしゃー!と叫びたい衝動にかられたほど、嬉しかった。


ただ、俺の言葉にのっかっただけかもしれないけど。


でも、いくら教室が隣だっていっても、家が近所だっていっても、会おうとしなければ会えない微妙な距離なんだよな。



高校に着いても、やっぱり葵をみかけることはなくて。


黙々と朝練に励んだ。


朝練が終わって、なんとなく自分の教室を見上げた時、隣のクラスの窓から葵がグラウンドを見ているのに気づいた。


俺は思わず、


「あおいー!」


って呼んでしまった。


俺と一緒に選んだ新しいメガネをかけた葵は、照れくさそうに笑うと、手を小さく振った。


俺はそれだけで、今日がんばれる気がした。


・・・気がしただけで、授業はほとんど寝てたけど。




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