遠まわりの糸
4人で食事に行くことを、葵は笑ってオッケーしてたけど。


移動中も店でも自分から話すことはなくて。


聞かれたことに答えるばかりだった。


最初は、どこの中学だったとか、どうやって勉強してるのとか、家族の話とか、あたりさわりのない話題だったけど。


食べ終わってジュースを飲んでいた時、カオリがいきなり、


「ねえ、泉川さんって、サクのこと好き?」


尋問するみたいに聞いた。


俺はあわてて、


「カオリなに言ってんだよ」


って止めたけど、


「いーじゃん、気になるんだもん」


ケロッとしてた。


3人が葵に注目すると、


「一緒にいて楽しい・・・です」


葵は、伏し目がちに答えた。


「葵ごめんな、カオリが答えにくいこと聞いて」


「ううん」


俺はとっさに謝ったけど、なんともいえない空気感になった。


「なあカオリ、俺にはなんか質問ないわけ?」


洋介がカオリに突っかかった。


「洋介に聞きたいことなんて、なーんもないっ!」


「俺にはつめてーな、相変わらず」


「だって洋介に興味ないもん」


「ウソだね、今日だって試合の時、俺のこと見てたくせに」


「それは、マネージャーとして見てたんです!」


「またまた、言い訳しちゃって」


「してない!」


「ほらほら、もうそのへんにしとけよ、お前らうるせーよ」


葵だけは、会話に入らずにずっと黙ってた。



店を出て電車に乗り、途中の乗り換え駅で洋介とカオリが降り、俺と葵はそのまま電車に乗って同じ駅に向かった。


「葵、さっきはごめんな。


あいつら騒々しいけど、悪いヤツらじゃないから」


「うん、だいじょうぶだよ」





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