遠まわりの糸
花火と彼女と夜空
花火大会まで予定が合わなくて、一度も葵と会えなかった。
だけど、毎日スマホで連絡をとっていた。
メガネを買いかえた時に一度、なんでもないメッセージを送ってから、抵抗がなくなって。
食べたものとか、グラウンドから見た夕焼けとか、写真を送ったりもした。
そうやってメッセージのやり取りをしていくことで、会えないさみしさを埋めていた。
そして、花火大会当日。
部活から帰ってシャワーを浴びた俺に、母さんが差し出したのは浴衣だった。
「どうしたんだよ、これ」
「この前、衝動買いしちゃったのよねー。
せっかくだから着ていきなさいよ」
「せっかくだから、ってどういう意味?」
「だって、葵ちゃんと行くんでしょ~」
母さんは、ニヤニヤしながら浴衣を着せようとした。
「な、なんで知ってんだよ!」
「葵ちゃんママと友達だって言ったでしょ。
葵ちゃんも浴衣着てくるらしいわよ」
母さん、完全に俺で遊んでる。
下駄や巾着まで準備万端。
浴衣着るなんて初めてだけど、葵も浴衣ならいいかも。
っていうか、葵はお母さんに俺と花火大会へ行くって、ちゃんと言ってるんだな。
それはもしかして、俺のこと隠さなくてもいいくらいに考えてくれてるってことなわけ?
葵の浴衣姿を想像したりして、余計に期待がふくらんでしまう。
身支度を整えて、葵の家に向かった。
玄関先で待っていたら、葵とお母さんが出てきた。
「あら、朔くんいらっしゃい。
お迎えに来てくれたのね、ありがとう。
浴衣とっても似合ってるわね、紘子さんセンスいいわー」
「ありがとうございます」
「いってらっしゃい、楽しんできなさいね」
「はい、いってきます」
「お母さん、いってくるね」
葵の浴衣姿は、想像以上にかわいくて。
普段はつけていない髪飾りで右耳が見えて、うなじが色っぽかった。
「じゃあ、行こっか」
「うん」
だけど、毎日スマホで連絡をとっていた。
メガネを買いかえた時に一度、なんでもないメッセージを送ってから、抵抗がなくなって。
食べたものとか、グラウンドから見た夕焼けとか、写真を送ったりもした。
そうやってメッセージのやり取りをしていくことで、会えないさみしさを埋めていた。
そして、花火大会当日。
部活から帰ってシャワーを浴びた俺に、母さんが差し出したのは浴衣だった。
「どうしたんだよ、これ」
「この前、衝動買いしちゃったのよねー。
せっかくだから着ていきなさいよ」
「せっかくだから、ってどういう意味?」
「だって、葵ちゃんと行くんでしょ~」
母さんは、ニヤニヤしながら浴衣を着せようとした。
「な、なんで知ってんだよ!」
「葵ちゃんママと友達だって言ったでしょ。
葵ちゃんも浴衣着てくるらしいわよ」
母さん、完全に俺で遊んでる。
下駄や巾着まで準備万端。
浴衣着るなんて初めてだけど、葵も浴衣ならいいかも。
っていうか、葵はお母さんに俺と花火大会へ行くって、ちゃんと言ってるんだな。
それはもしかして、俺のこと隠さなくてもいいくらいに考えてくれてるってことなわけ?
葵の浴衣姿を想像したりして、余計に期待がふくらんでしまう。
身支度を整えて、葵の家に向かった。
玄関先で待っていたら、葵とお母さんが出てきた。
「あら、朔くんいらっしゃい。
お迎えに来てくれたのね、ありがとう。
浴衣とっても似合ってるわね、紘子さんセンスいいわー」
「ありがとうございます」
「いってらっしゃい、楽しんできなさいね」
「はい、いってきます」
「お母さん、いってくるね」
葵の浴衣姿は、想像以上にかわいくて。
普段はつけていない髪飾りで右耳が見えて、うなじが色っぽかった。
「じゃあ、行こっか」
「うん」