遠まわりの糸
文化祭では、俺と葵はクラスが違うから準備も一緒にならず。


俺のクラスは、焼そばとフランクフルト。


俺はタオルを頭に巻いて、ひたすら焼き担当。


葵のクラスは、執事とメイドのカフェ。


葵がメイド服を着るっていうから見に行ったら、ヤバすぎるくらい似合ってた。


みんな、メガネの印象が強いから気づかないだけで、葵はめっちゃかわいいんだからな。


「なあ、泉川ってメイド服ヤバすぎじゃね?」


「あのメガネがそそるよな」


って、何人もの男の本音を聞いた。


聞くたんびに睨んでたから、俺の視線に気づくとコソコソ逃げてたけどな。


この頃には、俺と葵がつきあってるっていうのは知れ渡っていて。


俺たちは堂々とつきあえて、むしろ楽だった。


あっ、洋介の執事も、なかなかイケてた。



文化祭二日目は部活動中心になって、俺と洋介はサッカー部のアピールのため、リフティング競争と紅白戦に出た。


リフティングでは洋介に負けたけど、試合ではシュートも決めたし、洋介のチームに勝った。


葵も観に来てくれて、よけいはりきった。


部室で着替えてたら、洋介が近づいてきた。


「お疲れ」


「うっす」


「サク、泉川とつきあうようになって、変わったよな」


「そっか?」


「サクが図書館行くなんて、ありえねーし」


「まあな、俺も信じらんねーよ」


「あとさ、カオリのことだけど」


「カオリがどうかした?」


「サクのこと吹っ切るために、俺とつきあうことになったから」


「よかったな、洋介」


「気づいてたんだ、サク」


「鈍い俺でも気づくっつーの」


「今度、4人でどっか行こうぜ」


「そうだな」


洋介はたぶん、俺が気づくよりずっと前からカオリのことが好きだったんだろう。


そして、カオリが俺を好きなのにも気づいてて、知らないふりをして。


俺が洋介の立場だったら、洋介にキツくあたっちまいそうだけど。


洋介は一度も、俺を責めたりなじったりしなかった。


「洋介、お前って、ほんといいヤツ!」


俺のハグを、きもちわりー!と言いながらよけようとする洋介を羽交い締めにした。









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