遠まわりの糸
葵のおかげで期末テストもなんとかこなし、クリスマスイブの朝。


昨日の祭日は1日部活、今日も午前中部活。


もう三年の先輩たちは引退してるから、人数が少なくてみっちりしごかれた。


洋介に今日これからどうするのか聞いてみたら、


「カオリと待ち合わせして、夕飯食べる」


すました顔して答えた。


「俺も葵と食事に行こうと思ってるんだけど、ファミレスみたいなもんなんだよな」


「なに言ってんだよ、別にファミレスとかでいいじゃん。


金もねーし、ふたりで過ごすことが大事だろ」


「洋介にしては、まともなこと言うじゃん」


「失敬な!」



俺の計画では、16時に葵の塾まで迎えに行く。


そして、電車移動して教会のイルミネーションを見に行く。


教会の近くにあるレストラン(自宅近くにはない、ちょっとだけオシャレで、でもファミレスくらいの金額のイタリアン)で食事。


自宅最寄り駅まで移動して、初めてキスしてから、何度も行って何度もキスした高台の公園でプレゼントを渡す。


葵、喜んでくれるかな。


頭の中でシミュレーションしてたら、顔がニヤけそうで慌てた。



葵は、高校で会う時と同じように、ベージュのダッフルコートに白いマフラーをぐるぐる巻いていたけど、いつもと違うのは、ロングブーツをはいていたことだ。


オシャレしてくれたのは、俺への気持ちがあらわれているようで嬉しかったし、かわいくて新鮮だった。


「お待たせ」


「平気平気、それより葵、今日の服めっちゃかわいい」


「そうかな・・・ありがと」


「じゃ、行こっか」


左手を差し出すと、葵は右手をからめてきた。


細くて華奢な指は、手袋をしていないからかヒンヤリしていた。









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