遠まわりの糸
春休みになっても、俺と葵は今までと何も変わらず、仲良くつきあっていた。
高3の始業式の2日前。
葵は家族で温泉旅行するって言っていた。
『おみやげ買ってくるね』
電話口で楽しそうに話してた葵。
大学受験が終わるまでは旅行どころじゃないからって、両親から誘われたらしい。
『じゃあ、あさっての始業式の日、迎えに行くから』
『あっ、始業式の日ね、校長先生に呼ばれてて、早く行かなきゃいけないから、先に行って待ってるね』
『へー、なんで校長に呼ばれてんの?』
『なんかね、表彰されるんだって』
『わかった、じゃあ高校でな』
『ごめんね』
『気にすんなよ。
今度は同じクラスだといいよなー』
『そうだね、じゃあまたね』
葵は、いつもと同じだった。
そして、始業式。
クラス替えがあって、みんな貼り出された一覧を見ていた。
俺は、自分のクラスよりも先に、葵の名前を探した。
『泉川葵』
何度探しても、その名前はなかった。
俺はC組で、洋介と同じだった。
「サク、おはよー」
「なあ洋介、葵の名前がないんだけど」
「えっ?」
ふたりでもう一度探したけど、やっぱりなかった。
「・・・なんでだよ」
そこへたまたま、2年の時の担任が歩いてきた。
「先生、葵・・・泉川さんの名前がないのは、どうしてですか?」
「どうしてって・・・泉川から聞いてなかったのか。
泉川は、お父さんの仕事の都合で、春休みに関西の高校へ転校したんだ。
誰にも言わないで下さい、って依頼があったらしいけど・・・って、おい、橋本!」
「サク、待てよ!」
先生や洋介の声は、耳に入らなかった。
とりあえず、人混みを避けて葵に電話した。
『おかけになった電話は、電源が入っていないか、電波の届かないところにあるため・・・』
何度かけても、同じだった。
メッセージも、届かなかった。
高3の始業式の2日前。
葵は家族で温泉旅行するって言っていた。
『おみやげ買ってくるね』
電話口で楽しそうに話してた葵。
大学受験が終わるまでは旅行どころじゃないからって、両親から誘われたらしい。
『じゃあ、あさっての始業式の日、迎えに行くから』
『あっ、始業式の日ね、校長先生に呼ばれてて、早く行かなきゃいけないから、先に行って待ってるね』
『へー、なんで校長に呼ばれてんの?』
『なんかね、表彰されるんだって』
『わかった、じゃあ高校でな』
『ごめんね』
『気にすんなよ。
今度は同じクラスだといいよなー』
『そうだね、じゃあまたね』
葵は、いつもと同じだった。
そして、始業式。
クラス替えがあって、みんな貼り出された一覧を見ていた。
俺は、自分のクラスよりも先に、葵の名前を探した。
『泉川葵』
何度探しても、その名前はなかった。
俺はC組で、洋介と同じだった。
「サク、おはよー」
「なあ洋介、葵の名前がないんだけど」
「えっ?」
ふたりでもう一度探したけど、やっぱりなかった。
「・・・なんでだよ」
そこへたまたま、2年の時の担任が歩いてきた。
「先生、葵・・・泉川さんの名前がないのは、どうしてですか?」
「どうしてって・・・泉川から聞いてなかったのか。
泉川は、お父さんの仕事の都合で、春休みに関西の高校へ転校したんだ。
誰にも言わないで下さい、って依頼があったらしいけど・・・って、おい、橋本!」
「サク、待てよ!」
先生や洋介の声は、耳に入らなかった。
とりあえず、人混みを避けて葵に電話した。
『おかけになった電話は、電源が入っていないか、電波の届かないところにあるため・・・』
何度かけても、同じだった。
メッセージも、届かなかった。