遠まわりの糸
いわゆるフツーの大学生
葵がいなくなって、連絡もずっと取れないまま、高3の夏休みになった。


部活にも集中できなくて、インターハイも予選敗退し、そのまま引退。


洋介やカオリが代わる代わる、いろんな方法で俺を励ましてくれた。


すごくありがたかったけど、どうにもやる気がおきなかった。


夏休みに入ってすぐ、三者面談があった。


卒業後の進路の最終確認だ。


俺は、塾へ行ったこともなく、勉強に興味もなかったけど、漠然と大学へ行こうと思っていた。


「橋本くんは、赤点はなくてどの教科も平均点ぐらいですから、これから頑張ればまだ伸びしろはあると思います。


大学への進学をお考えですか?」


担任が母さんに向かって話しているのを、ボンヤリと聞いていた。


「サク、大学へ行こうと思ってるの?」


「・・・うん」


「橋本、それなら夏期講習へ行ってみたらどうだ?


模試も受けられるし、自分の実力を客観視できるいい機会だぞ」


俺は、葵と一緒に図書館で勉強したことを思い出した。


葵のおかげで、赤点ギリギリの成績が、平均点ぐらいまで伸びたんだよな。


「・・・はい、夏期講習へ行ってみようと思います」


俺の返事を聞いて、担任は満足そうに塾のパンフレットを渡してきた。


担任と母さんが学校生活について話している間、俺は葵のことを考えていた。





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