遠まわりの糸
卒業式が終わり、春休みにサッカー部3年とマネージャーで大阪へ卒業旅行に行った。


俺にとって、大阪=関西=葵だったから、もしかしたら会えるかも知れないと思うと、それだけで落ち着かなかった。


テーマパークでも、アトラクションを楽しむというよりは、まわりをキョロキョロしてる方が多かった。


移動中の電車内でも、食事する店でも。


そんな俺の姿に気づいた洋介は、


「泉川いないな」


って声をかけてきた。


「悪い、どうしても気になっちゃうんだよな」


「関西にしようって言ったの、カオリなんだ」


「えっ?」


「カオリなりに、サクのことを考えてんだよ」


「・・・そっか」


「いいヤツだろ、俺の彼女」


「そうだな、ちょっとおせっかいだけどな」


「そこがカオリのいいとこだろ」


「はいはい、ごちそうさん」


「おい、俺たちの気持ちを踏みにじるな!」


「わかったっつーの!」


追いかけてくる洋介をかわしながら、みんなの元へ戻った。


内心、ふたりに感謝しながら。



卒業旅行も終わり、大学の入学式までは車の免許を取りに行ったり、洋介とサッカー部の後輩を冷やかしに行ったり、短期バイトしたり、わざと忙しくしていた。


そして、誰も知り合いのいない大学の入学式。


私服で電車通学するのに慣れてきた5月、入ったフットサルサークルの新歓コンパ。


他学部の知り合いが急に増えた。


特に、教育学部の村野亮太(むらのりょうた)、理工学部の長谷川奏(はせがわそう)の二人とは気があった。













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