遠まわりの糸
カオリこと、本間香織(ほんまかおり)は、サッカー部のマネージャーで。


俺と中学も一緒だったから、お互いよくわかってるっていうか。


腐れ縁だけど、今も同じクラスで、なんだかんだ一緒にいる時間は多い。


高1の冬に「ずっと前から好きだった」って突然告白されたのは、事実だけど。


俺は、昔も今もサッカー馬鹿で、サッカーさえできれば、あとは正直どーでもよかった。


だから、女とつきあうとか、誰かを好きになるっていう感情が、いまいちよくわからなかった。


で、カオリに告白されても、


「わりー、俺さ、誰かが特別に好きとかわかんねーし。


今は、サッカーだけできればいいんだよな」


って、断った。


いま思えば、ずいぶん失礼な話だけど。


「そっか、わかった。


じゃあ、誰かを好きになることで世界が違って見えるってことがわかったら、教えて」


カオリは、涙ひとつ見せずに、話を終わらせた。


告白された翌日も、いつも通り接してくれたカオリは、俺よりずっと大人だった。



ホームルームが終わり、もうすぐ夏休み。


テストも終わって、いやでも気分があがる。


洋介と合流して、泉川を送ろうと教室を出ようとしたら、カオリが話しかけてきた。


「サク、なんで泉川さんと話してたの?」


「別に、なんだっていいだろ」


「教えてくれればいいじゃん、ケチ」


「いちいち教えなくたっていいだろ、ほら、洋介待たせてんだよ」


ディフェンスをかわすように教室を出たら、洋介と泉川が立っていた。







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