遠まわりの糸
「ほんとは閉店まで一緒にいたいんだけどさ、俺ら金ないし、ごめんな」


「・・・朔は、私の仕事、軽蔑しないの?」


葵は俺を上目遣いで見上げながら、恐る恐る聞いてきた。


「軽蔑しないよ」


「どうして?」


「だって、よっぽどのワケがあって葵が選んだバイトだろ?


俺にはどうすることもできないかもしれないけどさ、グチ聞いたり、そばにいることはできるから」


「朔は、優しいね」


「葵にだけ優しいんだよ」


「その優しさが、なつかしいな」


「なつかしいなんて言うなよ、これからは会えるんだし」


「・・・今の私を知ったら、朔はきっと私を軽蔑するよ」


「今の葵を、俺は受けとめたいんだよ。


生意気だけど、支えてやりたいんだ。


話して楽になるなら、いつだって聞くから」


「うん、じゃあ、いつか」


「お二人さん、そろそろお時間ですけど?」


さりげなく二人っきりにしてくれた洋介が声をかけてきた。


「葵、またな」


「うん、会えて嬉しかった」


洋介と店を出たあと、


「俺、葵が出てくるの待ってるから、先に帰っていいよ」


って洋介に言うと、


「なに言ってんだよ、俺もつきあうよ。


従業員通用口の場所も聞いといたし、葵が帰る前に連絡してくれって頼んどいたから」


「洋介、ありがとな」


「ま、今度昼メシでもおごれよ」


時間つぶしに、近くのファーストフードに入った。















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