遠まわりの糸
再会できた日は、朝まで甘い時間を過ごした。
葵は契約があるからといって、しばらくキャバクラで働いていたけど、11月に入った頃に辞めて、家庭教師のバイトを始めた。
葵のお母さんも退院して、自宅から通院するようになった。
葵のお母さんは、最初俺に会うのを避けていた。
たぶん、病気になったことで変わってしまった自分の外見とか、家庭の事情を知られてしまったことが気になっていたんだと思う。
でも、葵が根気よく話してくれて、少しずつ俺を受け入れてくれるようになった。
俺の運転で、病院まで送り迎えをしたこともあった。
葵とも、短い時間ではあったけど会う回数を重ねていって、気持ちが通じていった。
だけど、そう思っていたのは俺だけだった。
2月の、ものすごく寒い日だった。
俺は、バイト先に向かうために大学近くの大通りを歩いていた。
雲行きが怪しいと思っていたら、みぞれみたいな大粒の雨が降ってきた。
背負っていたリュックを片方はずして折りたたみ傘を取り出そうと、ちょうどあった店先の屋根の下に入った。
何の店か気にもしなかったけど、こじゃれたレストランだった。
その店のドアが開いて、なんとなく出てくる人を見た。
金持ちそうなオッサンと腕を組んでいたのは、葵だった。
俺と目があった葵は、一瞬驚いた顔をしたけど、何事もなかったかのようにオッサンに話しかけた。
そのままタクシーを止め、どこかへ走り去った。
何が現実で、何が真実なのか。
わからないまま、とりあえず急いでバイト先に向かった。
葵は契約があるからといって、しばらくキャバクラで働いていたけど、11月に入った頃に辞めて、家庭教師のバイトを始めた。
葵のお母さんも退院して、自宅から通院するようになった。
葵のお母さんは、最初俺に会うのを避けていた。
たぶん、病気になったことで変わってしまった自分の外見とか、家庭の事情を知られてしまったことが気になっていたんだと思う。
でも、葵が根気よく話してくれて、少しずつ俺を受け入れてくれるようになった。
俺の運転で、病院まで送り迎えをしたこともあった。
葵とも、短い時間ではあったけど会う回数を重ねていって、気持ちが通じていった。
だけど、そう思っていたのは俺だけだった。
2月の、ものすごく寒い日だった。
俺は、バイト先に向かうために大学近くの大通りを歩いていた。
雲行きが怪しいと思っていたら、みぞれみたいな大粒の雨が降ってきた。
背負っていたリュックを片方はずして折りたたみ傘を取り出そうと、ちょうどあった店先の屋根の下に入った。
何の店か気にもしなかったけど、こじゃれたレストランだった。
その店のドアが開いて、なんとなく出てくる人を見た。
金持ちそうなオッサンと腕を組んでいたのは、葵だった。
俺と目があった葵は、一瞬驚いた顔をしたけど、何事もなかったかのようにオッサンに話しかけた。
そのままタクシーを止め、どこかへ走り去った。
何が現実で、何が真実なのか。
わからないまま、とりあえず急いでバイト先に向かった。