遠まわりの糸
「わるい、待った?」


「いま出てきたとこ、な?」


「はい」


「ねーってば、サク、私にも教えてよー」


「カオリ、サクと泉川の関係が気になってんだろー」


「洋介には聞いてないし」


「なんだよ冷てーな、せっかく洋介サマが教えてさしあげようと思ったのによー」


「えっウソ、教えて教えて、洋介サマ!」


「しょーがねーな」


洋介はカオリに、俺が蹴ったボールが泉川の顔面を直撃したことを、かなり大げさに話した。


「えーっ、顔は女子の命だよ。


メガネも壊れちゃったんでしょ、サクに弁償してもらいなよ」


「いえ、弁償なんていいですから」


「いいのいいの、どーせサクはサッカー以外に興味なんてないんだから。


あっ、もうこんな時間だ、予備校行かなきゃだ、じゃあまた月曜日ね!」


カオリは、走って階段を下りていった。


「ったく、騒々しいんだよな、カオリは」


「なに言ってんだよサク、お前らケッコーお似合いだけど」


「うっせーよ」


実際、まわりにはそう思われてるらしいけど。


俺はいま、泉川葵という女子に興味津々で。


サッカー以外でこんなにハマったのは、あんまし記憶にないし。





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