遠まわりの糸
洋介は、昔っからこういうヤツだった。


バカなことばっかりしているようで、ツボをおさえてて。


人の気持ちを理解して、絶妙なパスをくれる。


「ありがと洋介、連絡してみる」


「おう」


それから、高校へ実習に行った時の話や、洋介が接客した変わった人の話で盛り上がった。


「そういえばさ、さっきカオリの話してたけど、たまには会ってんだな」


「ま、カットモデルやってもらったり、友達としてな」


「実は、ヨリ戻ってたりして」


「それはねーよ、カオリは年上の男とつきあってるから」


「年上か・・・やっぱ同い年だと、男は頼りなく思われるんだろうな」


「サク、泉川以外に誰ともつきあってねーの?」


「つきあってない」


「マジかよ、サクまさか『ヤラハタ』じゃねーだろうな」


「ちげーよ」


「ふーん、じゃあサクくんは泉川さんとやったんだ~」


「からかうなよ」


「そうなんだろ?」


「悪いかよ」


「まあ、初めての相手は、一生忘れないよな」


「洋介の初めての相手は、カオリだろ?」


「ああ」


「お互い、初めての相手には逃げられちまったってことか」


「そうだな」


「就活中の俺はともかく、洋介は誰かとつきあえばいいじゃん」


「毎日クタクタで、休みは寝て終わって、つきあう余裕なんてねーよ」


「それもそっか」






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