遠まわりの糸
横浜支店へは自宅から通えないから、週末を利用して独身寮へ引っ越した。


独身寮から支店まで、自転車で5分。


小学生チームの練習は週末だから、月曜と火曜は休みで、平日は雑用したり、練習メニューを考えたり。


先輩コーチに一から教えてもらい、支店の駐車場で練習した。


一年目は、覚えることと、それをこなすことに必死で、何の余裕もなかった。


たまに洋介や、神奈川の小学校教師になった亮太と飲んだりしてストレスを発散してた。


人間関係には何の不満もないけど、できない自分に対するストレスが強かった。



葵のことは、だんだん思い出さなくなっていた。


そんな自分がイヤになることもあった。


あんなに好きでたまらなかった葵を、忘れてしまうことがつらかった。


葵の存在がうすらいできたのは、時間が解決したわけじゃなく、同期の朱里が気になりはじめたからだ。


もう一人の同期の慎一は、大学からの彼女と続いているから、朱里に興味がないと言っていた。


肝心の朱里の気持ちはわからないままだったけど、朱里の屈託のない笑顔や、誰にでも分け隔てなく接するところに惹かれた。


入社2年目のゴールデンウィーク。


大型連休はイベントを企画して、普段はスポーツをしていない子どもたちにも体験してもらったりするので、カレンダー通りには休めなかった。


その代わりに、5月中旬以降に希望する日付で5連休もらえる。


会社の休みと合わせて9日間の休みだ。


その休みを利用して、朱里と二人で遊びに行きたいと思っていた。


もし断られたら、その休み中にリセットすればいい。


だから、連休は月曜から翌週火曜までの9日間にした。


同じ部署の人とは休みをずらさないといけないけど、朱里は総務部で普通にゴールデンウィーク休んでるから、問題ないし。











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