遠まわりの糸
高校から家まで、俺はチャリで15分くらい。


電車だとわざわざ乗り換えなきゃならないから、よっぽどのひどい雨以外は、チャリで爆走してる。


洋介は高校の最寄り駅まで5分くらい歩いて電車通学だけど、しょっちゅう俺んちに来てて、ジャンケンで負けた方が勝った方を乗せて俺んちまで行くってパターンが多い。



高校の近くは、カーブもあるキツイ坂道で。


部活の時ここをランニングするけど、かなりツライ。


坂道を、男ふたりがチャリ押しながら、真ん中を泉川が歩く。


泉川のこと知るチャンスだから、なんか話しかけねーと。


「泉川、家どこ?


俺は渋沢町の渋沢中出身で、小学校からサッカーやってて、サクとは高1ん時同じクラスでサッカー部も一緒でさ」


俺が考えてる隙に、洋介が泉川に質問しはじめた。


洋介は社交的で、誰とでも話せるタイプ。


反対に俺は、考えれば考えるほど悩んでしまい、言葉が出てこなくなる。


「新南駅からスーパーに向かって、1本目を左に入ったところです」


「あれ、じゃあサクと家近くね?」


「そうだな、大通り挟んで反対側だ」


冷静に答えたつもりだけど、内心メッチャ嬉しくて、ガッツポーズしてた。


「そうですか」


「二人は、同じ小学校じゃねーよな?」


「その大通りが学区の切れ目なので、たぶん違うと思います」


「じゃ、中学も違うわけか」


「あのな洋介、さすがに同じ中学だったら、泉川と初対面ってことねーから」


「そーだよな、わりぃ」


話してるうちに坂道が終わり、泉川は俺の後ろに座った。


「泉川、ちゃんとつかまっとけよ」


「はい」


泉川は、俺のシャツの端を軽くつまんだ。


背中に、泉川の体温を感じる。


やべ、めっちゃ汗かいてきた。


「いっくぞー!」


妙にテンションの高い洋介が先に自転車をこぎ始めた。









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