遠まわりの糸
そのまま俺たちはベッドに入り、何度もキスを重ねて少しずつ服を脱ぎ、裸で抱きあった。


朱里の中に入った時、なぜか葵のことを思い出した。


気持ちよくて朱里のことだけ考えているはずなのに、頭の片隅で葵の感触と比べていた。


朱里と葵は、違うのに。


俺は朱里に、葵の面影を求めてしまった。


俺に抱かれている朱里は、切ないくらい色っぽくて、かわいかった。


なのに、葵と体を重ねた時を思い出すなんて。


お互いに果てて、ベッドで朱里を腕枕してる時も、葵のことを考えていた。



葵。


俺、葵以外の人を、好きになったよ。



葵がいま、幸せならそれでいいと思っていたはずなのに。


無性に葵が恋しいのは、なんでだろう。



「・・・サク、シャワー浴びる?」


「じゃ、一緒に入るか」


「アホやなあ、狭くて無理やわ」


関西弁=心を許してくれてるってことが、嬉しかった。











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