遠まわりの糸
「サクは、まだ泉川に未練タラタラなわけ?」


「うーん、ないといえばないし、でもゼロかっていうと少しはあるような気がするし」


「初めての相手なんだからさ、忘れられるわけねーんだよ。


今の彼女を大切にしろよな。


そうじゃねーと、また失うことになっちまうぞ」



洋介の言うことは、いちいちもっともなことなんだけど。


葵のことは、一生忘れられるわけないし。


つきあうとか、そういうんじゃなくて。


いま葵が、幸せでいるか知りたいだけなんだ。


小学校の先生っていう夢をかなえて、がんばっているならそれでいいんだ。


だけど、葵の居場所すらわからないし。


探す術もないし。



心のはしっこに、そんな気持ちを抱えたまま過ごしていた12月。


朱里の誕生日がたまたま日曜で、でも俺は仕事で小学生チームの練習試合に行かなきゃならなかった。


もちろん、試合が終わる夕方からは、朱里と過ごすつもりだった。


試合に勝ったからみんな喜んで、帰りのミーティングをして、お母さんたちと少し話していた。


お母さんたちも勝ってテンションあがってたのか、俺と写真を撮ったりハイタッチしたりしてた。


みんなを見送ってからスマホを見たら、


『モテモテで楽しそうだから、帰る』


って、朱里からメッセージがきてた。


数分前だったから慌ててまわりを探したら、駅の方向へ向かって歩いている朱里をみつけた。











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