遠まわりの糸
そして、月曜日。
もちろん、昨日の夜から何度も連絡したけど、まったく返事はなかった。
午前中は、もともと予約してあったから、美容院で髪を切った。
いつもより少し短めにした。
なんとなく、少しはスッキリしたような気がした。
寮に戻って掃除して、プレゼントの入った紙袋を持って会社へ向かった。
17時すぎ、朱里は一人でエレベーターから出てきた。
「朱里」
近づいた俺を見て、ものすごく驚いた顔をした。
「サク・・・どうして?」
「どうしてって、連絡つかないから直接会いに来たんだけど」
「この前はごめんなさい、大人げなかったよね」
「もういいよ」
「一緒に帰ろっか」
「これ、1日遅くなったけど、誕生日プレゼント」
「ありがとう、うれしい」
表面上は仲直りできた、と思う。
でもなぜか、しっくりこなかった。
妬いてくれるのは、悪い気分じゃないんだけど。
子どもがいる母親に妬くっていうとこが、少しひっかかっていた。
葵なら、母親を妬く対象にはしないだろう。
葵なら、『シャッターおすよ』とか言って、さりげなく存在をアピールするんじゃないだろうか。
このケンカ以来、俺の気持ちが少し冷めてしまったみたいで、苦しかった。
ケンカもしない代わりに、盛り上がることもなくて。
これが倦怠期ってやつなのか。
クリスマスは朱里のアパートで過ごしたけど、普段と違うのは、ケーキがあったことくらいで。
年末年始休暇に入った29日に、奏と亮太と3人で飲んだ。
奏は札幌を満喫してるらしく、スマホのアルバムを大量に見せてくれた。
「めちゃくちゃ寒いけど、飯はうまいし、俺にはあってる」
「休みの時は遠出すんの?」
「向こうで安い中古車買ってさ、ドライブしてる。
札幌市内は交通の便いいから不自由ないけど、観光するなら車がないと無理だから」
「サク、夏休みに札幌行こうぜ」
「おう」
「奏、彼女できた?」
奏はニヤニヤしながら、写真を見せてくれた。
亮太と一緒にスマホをのぞきこむと、ショートカットのかわいい子とツーショット写真があった。
もちろん、昨日の夜から何度も連絡したけど、まったく返事はなかった。
午前中は、もともと予約してあったから、美容院で髪を切った。
いつもより少し短めにした。
なんとなく、少しはスッキリしたような気がした。
寮に戻って掃除して、プレゼントの入った紙袋を持って会社へ向かった。
17時すぎ、朱里は一人でエレベーターから出てきた。
「朱里」
近づいた俺を見て、ものすごく驚いた顔をした。
「サク・・・どうして?」
「どうしてって、連絡つかないから直接会いに来たんだけど」
「この前はごめんなさい、大人げなかったよね」
「もういいよ」
「一緒に帰ろっか」
「これ、1日遅くなったけど、誕生日プレゼント」
「ありがとう、うれしい」
表面上は仲直りできた、と思う。
でもなぜか、しっくりこなかった。
妬いてくれるのは、悪い気分じゃないんだけど。
子どもがいる母親に妬くっていうとこが、少しひっかかっていた。
葵なら、母親を妬く対象にはしないだろう。
葵なら、『シャッターおすよ』とか言って、さりげなく存在をアピールするんじゃないだろうか。
このケンカ以来、俺の気持ちが少し冷めてしまったみたいで、苦しかった。
ケンカもしない代わりに、盛り上がることもなくて。
これが倦怠期ってやつなのか。
クリスマスは朱里のアパートで過ごしたけど、普段と違うのは、ケーキがあったことくらいで。
年末年始休暇に入った29日に、奏と亮太と3人で飲んだ。
奏は札幌を満喫してるらしく、スマホのアルバムを大量に見せてくれた。
「めちゃくちゃ寒いけど、飯はうまいし、俺にはあってる」
「休みの時は遠出すんの?」
「向こうで安い中古車買ってさ、ドライブしてる。
札幌市内は交通の便いいから不自由ないけど、観光するなら車がないと無理だから」
「サク、夏休みに札幌行こうぜ」
「おう」
「奏、彼女できた?」
奏はニヤニヤしながら、写真を見せてくれた。
亮太と一緒にスマホをのぞきこむと、ショートカットのかわいい子とツーショット写真があった。