遠まわりの糸
「えっ?」


「何度も言わせんなよ。


葵ちゃんとは別れたから。


何度も話し合って、二人で出した結論。


葵ちゃんは、本当のことを俺に話せなかったって、すごく後悔しててさ。


キャバ嬢だったことも、サクとつきあってたことも。


別れてほしいって言ってきたのは、葵ちゃんから。


俺は、葵ちゃんの過去も全部受けとめるって、説得したんだけど、どうしてもダメなんだってさ。


それって、サクには話せても、俺には話せなかったってことだろ?


悔しいけど、葵ちゃんにとって、サクは特別な存在なんだよ」


「亮太、ありがとな」


「ってことで、葵ちゃんはもうフリーなんだから、奪うなり連れ去るなりして、幸せになれよ」



俺は、友達に恵まれてる。


亮太も洋介も慎一も、俺のためにいろいろ考えてくれる。


あいつらがピンチの時は、絶対に助けようって思った。



それからしばらく、お互いの近況報告をして。


いい感じに酔ってきて、俺はトイレに立った。


戻ってきたら、亮太がいなかった。


入れ違いでトイレ?


外で電話してるとか?


ま、そのうち戻ってくんだろ。


なんとなくスマホを見てたら、


「いらっしゃいませ、何名様ですか?」


と店員の声が背後から聞こえ、誰かが店へ入ってきたみたいだった。


亮太が戻ってきたのかも、と思っていたら、目の前に葵が立っていた。







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