遠まわりの糸
「俺は、葵が好きだ」


「ありがとう」


「だから、もう一度つきあってくれる?」


葵は黙ったまま、何も答えてくれない。


「葵・・・?」


「つきあっても、いいのかな・・・」



二人とも、つきあっていた人がいて。


傷つけて別れることになった。


不幸を踏み台にして、自分たちだけ幸せになるなんて、ためらいがないかと聞かれれば、嘘になる。


だけど、どうしても、葵のことを離したくない。


ずっと隣にいてほしい。



「葵、俺のこと、好き?」


「大好き」


「お互い好き同士なら、つきあっても誰からも非難されねーよ。


きちんと精算したんだし」


「・・・うん」


「葵、こっち座って」


隣に座った葵に、軽くキスをした。


「続きは、また今度な」


「今度?」


「葵の全部を知るのは、またな」


「朔のエッチ」


「えっ、俺は今までのことを聞こうって思っただけだけど?」


「朔の意地悪」


軽くふくらませてる頬に、そっとキスした。


「私ね、朔が学校に来たとき、心臓が止まるほどビックリした。


どうして神様は、こんなことするんだろうって。


で、亮太くんと朔が友達だって聞いて、もうダメだって思った。


私の過去がバレて学校にいられなくなるとか、亮太くんにフラれるとか、悪いことばっかり考えた。


でも、朔は亮太くんに何も言わなかった。


だから、朔のことを信じていいのかな、って思った」


「お互いいろんなことがあったけど、今までの時間よりこれから一緒に過ごす時間の方が大切だろ?


俺は、これからずっと葵と一緒にいたいんだよ」


葵は、照れくさそうに笑っていた。



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