遠まわりの糸
「俺たち、すげー遠まわりしたよな」


「ほんとだね」


「でもさ、初めてつきあった相手と結婚するなんて、なかなかないよな」


「身近にいるけど?」


「あっ、洋介とカオリか」


「意外と、よくあるパターンなのかも」


「俺は、葵にボールぶつけた日、一目惚れしたんだよな」


「・・・私は、もっと前からだけど?」


「ごめん、俺はあの日初めて葵に気づいたけど、もしかして高1の頃から俺のこと知ってた?」


「ううん、もっともっと前から」


「もっと前って、いつ?」


「恥ずかしいからナイショ」


「なんだよ、そこまで話したんだからちゃんと最後まで言ってくれよ」


「・・・笑わない?」


「笑わない、約束する」


「幼稚園年長の時から、私は朔のことが大好きだったから。


朔に『結婚してくれる?』って聞いたら、『いいよ』って言ってくれた。


いま思えば、朔にとっては『結婚』って何のことかがよくわかってなかったんだろうけど」


「ごめん、ぜんぜん覚えてない」


「いいの、私はすごく嬉しかったし、夢がかなったから」


「夢って、小学校の先生になるってこと?」


「それもそうだけど、朔と結婚するってこと」


葵は話してるうちに本気で恥ずかしくなったのか、顔がどんどん真っ赤になってきた。






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