姫色-Hime*iro-
「昼の話…」
「?」
「誰にも…言わないでね。」
「はい。」
「じゃ、今から言うことも私の勝手な独り言だから、聞き流してね。」
「はい…」
「お母様はね、生きてるの。」
そんなの初耳だ。
お嬢様はいつ知ったのだろう?
「どこにいるかは分からないけどね…」
そう言って、さびしそうに微笑むお嬢様を気が付けば俺は、抱き締めていた。
「な…ぎさ…?」
「さびしかったら、泣けばいい。
誰もお嬢様を変な風に思ったりしないから。
だから、そんなに…
さびしそうに笑わないで下さい…」
そこまで言って、我にかえる。
「あ、ごめんなさい。急に…」
「べ、別にどうってことないわ。」
「そろそろ…戻りましょうか。」
「あ…なぎさ…」
「どうしました?」
「いや…やっぱ何でもない。」
そんな二人のやりとりを、夜空にうかぶ月だけが見ていた…。
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