姫色-Hime*iro-
「なぎさの!?
家は?」
どうやらお嬢様は俺の生い立ちを知らないようだ。
まぁそれはそうか。
「ないですよ。俺に、帰る家なんて…
俺は、捨てられたんです。」
本当は、俺が捨てたのかもしれない。
あの家を…あの、家族を…
「だから、俺の帰る場所は…お嬢様の隣しかないんですよ。」
*****
なぎさが自分のことを話したのは、初めてのことだった。
はじめて聞く、なぎさの話
はじめて聞く、悲しい過去
このことをなぎさが話したのは多分、私が初めてだろう。
「帰りましょうか。」
そう言うなぎさに、少しだけ胸の鼓動が高鳴った。
そうか、私は…
.