姫色-Hime*iro-
「はい…」
「これから、よろしくお願いします。
あ、あと、私のことは"なぎさ"とでもお呼び下さい。」
「な…ぎさ…」
「えぇ。では私の方は"お嬢様"と呼ばせていただきますね。」
これが、私となぎさとの出会い。
「…うさま、お嬢様…」
「ん…?」
夢…か…
「もう少しで降りますよ。」
そうだ、今は電車の中。
「ありがと、なぎさ。」
「…?何か言いました?」
「何も!!」
一年たっても忘れることのない、あの日の出来事。
ねぇ、なぎさは覚えてる?
*****
電車の中で、お嬢様はずっと眠っていた。
慣れないことを一週間もしたんだから疲れたんだろうな。なんて考えていたら…
「な…ぎさ…」
名前を、呼ばれた気がした。
あの日と、同じ響きで。
でもそれは、気付かない方がいいと思った。
お嬢様の為じゃなくて
自分の為に。
"お嬢様と執事"
この関係を
続けていく為に…。
.