アンフィニッシュト・ブルー(旧題 後宮)
彼はもう少し話していたそうだったが、やがて気持ちを切り替えて浅く微笑んだ。
「そうだね、……ありがとう」
その「ありがとう」は何に対する感謝の言葉だったのだろう。
私はそれを理解することを避けたまま、キッチンに向かった。
私はミハイルに優しくしてあげるべきだ。そのためにはどんな話も聞いてあげるべきだと思っていたが、一方でこれ以上、彼の事情、カガンの事情に踏み込んではいけない気がした。彼は時々出かけて行く先について何も私に話そうとしないし、それはきっと私が聞いてはいけないことだ。
少しリラックスすると、私はつい彼の事情に踏み込んでしまうし、彼も私に対する恩義の気持ちからかそれに応じてしまう。
だから、私が自制すべきなのだ。
気をつけなければ。