アンフィニッシュト・ブルー(旧題 後宮)
ミハイルとの暮らしは楽しかった。揃ってどこかに遊びに行くわけでもない、話があうわけでもない。互いに知らないことだらけの私達。けれど、ミハイルの気配が家のどこかで感じられる暮らしはほんのりと温かく、私はその静かな温かさが好きだった。
彼との暮らしがそう長く続けられるものでないことはよくわかっていたはずなのに。
父の死以降、すっかり身に染み付いたと思っていた孤独な暮らしはいつの間にか私をひどく孤独に弱くしてしまった。
今となってはいいわけも、彼の名を呼ぶこともできない。
孤独に耐えることもできない。
私はただただ、雪の降りつもる外階段に立ち尽くした。