アンフィニッシュト・ブルー(旧題 後宮)
「……大変そう」
たった30分、一人の時間を作るために、公邸から逃げてきたのだろうか。それとも、ただの好奇心でこんな寂(さび)れた店を訪れたのだろうか。
父をなくし、店の二階で暮らす私にとっては一人でいること自体、もう当たり前のことになってしまったけれど、彼にとってはそうではないのだろうか。
常に誰かがそばで自分を見ている生活、か。
私だったら絶対に耐えられない。
普通の会社勤めも半年ともたなかった私なら、すぐに疲れてヒステリーを起こしてしまいそうだ。
彼の生活を想像するだけで息苦しくなってしまった。