アンフィニッシュト・ブルー(旧題 後宮)
ミハイルの言葉で自分の踏み込んだ道の険しさを改めて思い知らされることになった私は、ぎゅっと下唇を噛みしめた。
ミハイルはその美しい目を細め、やがてゆっくりと私の額に唇を押し当てた。
「怖い……?」
私は小さく頷いた。
「大丈夫……あなたは僕が守る。僕があなたを守れなくなった時、あなたは堂々と僕を捨てていい。その時なら僕は恨(うら)まない。
だからそれまでは、」
僕の傍にいて。
その一言は肌に直接囁かれた。思考を麻痺させる毒のように甘い懇願に、私は体を震わせた。
怖いのか、恋の深みにはまっていくのか、もはや私にも分からなかった。
年上ぶって弁(わきま)えて見せたつもりでも、こんな恋の行方がどこに向かっているのかは私自身にもわからないのだった。