アンフィニッシュト・ブルー(旧題 後宮)
「ううん、折り目に沿って……昨日の新聞と同じようにホチキスでとめて並べるの」
ミハイルは頷いてラックに並んでいる昨日の新聞を見て同じように今日の新聞を処理していく。
一国の王子にこんな事をさせていいのだろうかと思いながらも、開店の時間が迫ってくると罪悪感は薄れてくる。
元々は父と私の二人でやっていた店を一人でやっているのだ。いくら寂(さび)れた店であろうとやはり忙しい時間帯は人手が欲しい。
そのとき、ミハイルの手が止まった。
「ハル、テレビをつけても?」
「え?ああ、どうぞ」
ミハイルは新聞を放り出してテレビをつける。
しばらくチャンネルを回していたミハイルは、ある放送局のニュース番組に見入った。
『次は、事故のニュースです。本日未明、M区の飲食店街で爆発がありました。ビルで働いていた外国人四名が死亡した模様です。現在、火は消し止められていますが、警察と消防で火事の原因を調べると共に、建物の管理などに問題はなかったか現場検証を行うことになっています』
女性アナウンサーの固い声と共に、爆発が起きた現場の映像が大きく映し出された。
さほど大きくはない雑居ビルの窓がすべて割れ、携帯を手にした人々がテレビカメラに映る。死者が出たというのに、そんなことはおかまいなしにテレビ画面に映りこもうとする若者もいた。
ミハイルは黙ってテレビを見上げていたが、やがて、小さくため息をついた。
私はその真意の見えない表情に手を止めた。
ミハイルはテレビ画面に見入ったまま、ぽつりと呟いた。