アンフィニッシュト・ブルー(旧題 後宮)
私ははっと息を止めた。
私の反応を恐れるように、ミハイルが強く私の体を抱きしめた。
「クーデターが起こるような国だ。きっとあなたから見れば怖い国だろうけれど、……大丈夫、僕がいる。クーデターからも、誰からもあなたを守る。だから、一緒に来て欲しい。
僕の所有する春の離宮に入って、春が来るのを待ってから……それから僕の即位式を行う。
あなたも出席してくれるね、一緒に、僕が王になる瞬間を見て欲しいんだ。
あなたがいてくれたら、僕は誰よりも強くなれる気がする」
「そりゃあ、あなたが王になるのは見たいよ、でも私……」
店のこともあるし、何よりカガン人が私を歓迎しないだろう。国民が彼を愛していればいるほど私は彼の汚点になる。
彼は私の言いかけた言葉を遮って、私の唇に自身の長い人差し指を押し付けた。
「……断らないで。
僕の心を壊さないで。
僕は、ひとりぼっちだ。あなたという妻がいなければ生きていけない」
ミハイルは縋(すが)るように私を抱きしめ、背中に流れる私の髪を撫でた。