アンフィニッシュト・ブルー(旧題 後宮)

周りが一歩も二歩も先んじて私の未来を考えてくれている。
肝心の私は自分の気持ち、ミハイルの気持ちだけにしか注意が行かず、自分の未来の姿などまるでイメージがわかない。

私は何をどう考えて、何を選び取ればいいのだろう。

私がカガンに行くことを選択した場合、ミハイルのために育てられた、側室となる予定の貴族の娘たち……彼女たちはどうなるのだろう。予定通り後宮に入るのだろうか。
私は女官になるのだろうか、それとも宮廷とは別の場所で暮らすことになるのだろうか。
ミハイルがどんなつもりで私を妻と呼んでいるのかがわからなくなってきた。


それまで映画の中にしかなかった後宮という世界が 私を飲み込もうとしているのだろうか……。
この、意気地のない私が美しいお妃候補とミハイルの寵(ちょう)を争う……そんなこと、起こりうるのだろうか。


「あなたがカガン行きを希望されないのであれば、たとえフライトの寸前でも、私は日本政府としてあなたの権利を守るべく行動します。例え王子が何を言おうと」

井出さんは小さく、しかし強い意思を持った言葉でそう断言した。

この人は、未成年でもない私をどうしてこれほど案じてくれるのだろう。
井出さんから見た私は、いいように騙(だま)されているように見えるのだろうか。
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