アンフィニッシュト・ブルー(旧題 後宮)
私は傷ついた虎徹がよくやるように、手足を縮めてソファの上に体を横たえた。
目を閉じると、この家に残るミハイルの残り香がほのかに感じられるような気がした。しかしそれももうじき日常にかき消されて消えてしまうだろう。
思い出すまいと必死に努めても、最後に見た彼の顔が忘れられない。怒りと憎しみと悲しみがまじりあったミハイルの表情が私を悩ませる。
ごめん……。
強くなくて、ごめん。
意気地がなくて、ごめんね。
ミハイルがそうしてくれたように、愛さえあればと、私も言えていたら。そう思えていたら。
今となっては謝罪の言葉さえ彼に届けるすべがない。
言えなかった言葉を飲み込んで、私はすべてをなかったことにすることしかできなかった。
それが、私が彼に示すことのできる、たったひとつの気持ちだった。